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のいちごくっきーの宇宙日記

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書評 ニッケル・アンド・ダイムド
ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実 / B.エーレンライク

このブログにコメントしていただいた方がこの本の英語版Nickel and Dimed: On (Not) Getting by in America (Spare Change?) / Barbara Ehrenreichをお薦めしてくれて、最近ちょうど邦訳が出たので、読んでみた。

筆者は自称「中流の上」の階層にいて、執筆でそれなりの生活をしていたのに、調査のため自ら体を張ってワーキングプア(働いているが貧しさから抜け出せない層)の生活を体験。一部の身分証明書を除いては、完全に今までの生活を捨てているところがただの体験とは異なる。3つの地域でいくつかの仕事をこなすが、どこに行っても劣悪な環境で、賃金が安く、規則だらけで、性格検査や薬物検査などによって心身ともに資本家に搾取される様を記述している。特に、性格検査は細かい規則も全て守り、上に逆らえないようにしようという圧力をかけているのが分かるようになっている。

社会心理学では擬似的な刑務所を使い、一般人に看守役と囚人役に分かれて生活してもらうという実験があった(詳しくはこの映画を参照es[エス] / モーリッツ・ブライプトロイ)この実験では、元々被験者は一般人で、擬似的な刑務所で一定の役割下で生活するだけだったにも関わらず、看守は囚人を虐待し、囚人は自尊心が低下し、手がつけられない状況になったため、実験が中止に追い込まれた。人は、元々正常であっても、役割を取得することによって凶暴にもなり、自尊心が低下することもある。「ニッケル・アンド・ダイムド」で説明されていた労働の環境でも、各々は役割に従っているだけだが、上役は最下層の労働者を奴隷同然に扱い、労働者は無力なまま身動きが取れなくなってしまっているのだ。

筆者と出会った労働者の一人は、筆者に優秀な所を見せるな、見せても何の特にもならず、かえって向こうの思うように扱われると忠告した。この労働環境は皆が仕事を共にする場ではない。金銭や物理的な過酷さだけではなく、労働者が搾取される側になるように社会的・心理的に職場が構造化されているのだ。

今、日本では偽装請負の事件が明るみに出て問題となっている。企業は工場の労働者の賃金を削り、安全の責任の所在をあいまいにしたいのだ。それだけではない。一般の派遣労働でも出勤や移動に至るまで全て携帯電話などで管理されているし、社会保障も不十分ならば、研修の機会もなく派遣労働がキャリアアップにつながらないようになっている。正社員とそうではない人の格差は固定化しつつある。「ニッケル・アンド・ダイムド」は外国の本だが、決して日本に関係ないものではない。大幅な政策転換が無い限り、数年後の日本がこうなる可能性はかなり高いといえる。そういう意味で、本書は世界的に意義のある本だといえる。

筆者はこういったことが無くならないのは富裕層や中産階級が、貧困層に接する機会が減っているからだとしている。ただ、富裕層も常にライバル会社との競争にさらされていたり、強盗対策のため警備が厳重で隔離された家に住まざるを得ないなど、仮に貧困層の事を富裕層が知っていたとしても、自分の生活水準の低下の危険や身の危険を強く感じていたら、貧困層を搾取しなければならないと考えることは当然であり、情報の不足が原因とは考えにくいという点で、私は筆者に賛成できない。

日本人も俗に言う「負け組」ならば、搾取されるという話をしたが、日本人は搾取する側でもある。例えば、チョコレート一つとっても、安い板チョコは、途上国の人間を奴隷のように扱って生産されるものだ。フェアトレード(商品を安く買い叩かない)のチョコレートはかなり高い。もちろん、今すぐ皆が聖人になることは不可能だが、搾取の構造を変化させることは人間の義務である。「自由競争ならなんとなくかっこいい」だとか特定の政治家がかっこいいから投票するなどという行為で社会を腐敗させることは許されることではない。

この状況の改善には、ロハスブームのように、自分が好きなことが社会的利益につながるという構造を作り、多くの人々に普及させ、ロビー活動につなげるということが考えられる。具体的な方法はそれこそ社会学や社会心理学の研究成果を生かすことになるだろう。困難な道だが、決して不可能ではない。

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テーマ:格差社会 - ジャンル:政治・経済

| 社会問題 | 00:01 | トラックバック:0コメント:5
コメント
こちらでは、初めまして♪

私も、格差社会についてはレビューをいくつかしていることもあり非常に興味をもって拝見させて頂きました。

>筆者と出会った労働者の一人は、筆者に優秀な所を見せるな、見せても何の特にもならず、かえって向こうの思うように扱われると忠告した。この労働環境は皆が仕事を共にする場ではない。金銭や物理的な過酷さだけではなく、労働者が搾取される側になるように社会的・心理的に職場が構造化されているのだ。

格差社会(同時に実力社会)と言われるアメリカですが、その実際(の一面)を知った気がして少々驚きました。


>仮に貧困層の事を富裕層が知っていたとしても、自分の生活水準の低下の危険や身の危険を強く感じていたら、貧困層を搾取しなければならないと考えることは当然であり、情報の不足が原因とは考えにくいという点で、私は筆者に賛成できない。

この点に関しては、のいちごくっきーさんの見解に賛成します。実際に本を読んでいないのですが、単に「情報の不足」として実際に交流するだけでは、片付けられない格差社会の持つ「構造」上の問題であるように思えてなりません。


分かりやすいレビューでした(^^
これからも、ちょくちょく遊びに来ようと思います♪

あ、相互リンクを貼らせて頂けないでしょうか?ご検討の程、よろしくお願いいたしますm(_ _)m

ではではノシ
2006.08.10 Thu 14:00 | URL | シタン先生
初めましてデス
 同じFC2社会科学ランキングにエントリーしているので、ちょくちょく覗いておりました。。。

 朝日新聞でも「偽装請負」についての報道が、一面のトップで行われていましたね。。。

 ただ、この格差社会は、雇い主の個人的な資質の問題が原因であり、小泉改革とは無関係ですよね?

 この格差社会の問題を、政府批判に使うのは的がはずれていると思います。。。

 小泉首相の次の首相として、最有力候補である安倍官房長官は、自著(『美しい国の中へ』)の中で、格差社会の固定は絶対に回避しなければならないと強調しています。。。

 こんな搾取の実態を知ったならば、もし総理大臣に就任したら、真っ先に改革に着手するのではないかと思われます。。。(まあ、すでに役所の立ち入り検査を強化するという方向に改革が進んでいますしねw)

 あの人は、こういう不正を絶対に許さない人ですから。。。

(そのためにも、こういう格差社会を固定化するような不正は、どんどん糾弾して声を上げていく必要があります。。。)←政府に声が届けば、必ず対応してくれると思います。。。
2006.08.10 Thu 17:58 | URL | Jun♪(尊野ジョーイ)
コメントありがとうございます。
私が、この本を読んで、また、格差社会の構造について考えている事をほんの少しだけ述べました。

総じていえることは、全ての社会科学の問題の対象にいえることですが、人間の行動や社会現象は、個人の内面のみに起因するわけでも、歴史や環境のみに起因するのでもなく、個人と社会が相互作用して出来ているのです。

それを無視し、「この原因はこの人の心の闇だ」「歴史的・文化的差異だからどうしようもない」などというのは非科学的精神論です。格差とは関係ないですが、この辺の議論は山岸俊男「心でっかちな日本人」を読まれるとお分かりになるかと思います。
2006.08.11 Fri 00:31 | URL | のいちごくっきー
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2006.08.11 Fri 22:25 | |
ムーンです、コメントありがとう。また来ます。
2006.08.14 Mon 01:11 | URL | ムーン
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